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北大路部会 部会長インタビュー

カテゴリー:北大路部会

北大路部会 部会長インタビュー:タイヨウネクタイ株式会社 松田 梓さん

― 西陣織ネクタイから紡ぐ挑戦とつながり、そして北大路部会の未来へ ―

プロフィール

タイヨウネクタイ株式会社の松田梓さん。JOCには第20期に入会。現在は北大路部会の部会長を務めておられます。京都出身ながら、社会人としての第一歩は東京の映画業界でした。9年間にわたり映画編集助手として「20世紀少年」「SP」などの作品に携わり、フィルム編集の時代からデジタル編集への過渡期を現場で経験してこられました。

東日本大震災をきっかけに京都へ戻り、家業である西陣織ネクタイの世界へ。今では「自分で考えて、自分で動ける仕事が好き」と笑顔で語る、挑戦心あふれる経営者です。

会社と事業

タイヨウネクタイ株式会社は、明治40年(1907年)創業。帯や着物の裏地の製造から始まり、戦後の衣料需要の変化に合わせて、現在は西陣織のネクタイ生地の製造を中心に、製品の卸・販売まで手がけるメーカーです。細かな柄表現を得意とする西陣織の技術を活かし、「締め心地の良さ」と「しっかりとした生地感」で、多くの顧客から支持を集めています。

「結んだ瞬間に『あ、いい生地だな』と気づいてもらえるのが一番嬉しいですね。」と松田さん。

創業から受け継がれる強みのひとつが、自社1階に構える工場の存在です。デザインデータを自社で作成し、簡単な柄であればそのまま織機へ。イラストから織物の信号データへの変換まで一貫して対応できることから、「すぐに試作して、すぐに実物を見てもらえる」小回りの利くものづくりが可能です。複雑なデザインについてはプロのデザイナーと連携し、「お客様にとって一番良い形」をご提案されています。

松田さん自身の大きな転機となったのが、自社商品の開発でした。外部の講座で商品開発を学び、西陣織の生地を使った『猫の首輪』を企画。クラウドファンディングにも挑戦し、多くの支持を得ました。

「自分で考えて、自分で作ったものが世の中に出ていくのは、やっぱり怖い。でも、それ以上に嬉しい経験でした。」とお話されている姿がとても印象的でした。

この挑戦をきっかけに、表に出ていくことへの苦手意識が少しずつ和らぎ、新たな企画にも積極的に取り組むようになったそうです。

西陣織ネクタイの魅力について尋ねると、「織り方そのものは他産地と大きくは変わらないです」と前置きしつつ、「どんな糸を使うか、どこまで細かい柄を表現できるか。芸術作品に近い感覚のテキスタイル(※)を作れるのが西陣の特徴だと思います」と話します。

(※ 「テキスタイル」とは、織物、布、生地を意味する言葉です。一般的に、糸から作られた布状の素材全般を指し、天然繊維や化学繊維など様々な種類のものが含まれます。)

仕立てられたネクタイは締め心地が良く、シルクならではの上質な風合いが首元を彩ります。「ネクタイを見ると、その人の仕事へのスタンスがなんとなく分かりますね。ちゃんと結んでいる人は、やっぱりちゃんとしているなと感じます。」と、ネクタイへの深い愛情を感じました。

同社が蓄積してきた柄デザインは、紙資料やデータ、生地サンプルなどを合わせると1万柄を優に超えるといいます。過去のライブラリーから海外向けの企画を引き出すことも多く、「昔の感性は、いま同じものを作ろうと思っても絶対に再現できない。その価値をきちんと活かしていきたい。」と話されていました。

近年は、海外展開にも挑戦中です。2年ほど前からイタリア・ミラノで開催される生地の展示会「Milano Unica」に参加し、ヨーロッパを中心とした世界各国のバイヤーに西陣織のネクタイ生地を紹介しています。まだ継続的な取引には至っていないものの、ハイブランドからサンプル依頼を受けるなど、手応えは十分。さらに、そこから派生して万博関連のプロジェクトに声がかかり、京都大学の先生が手がける宇宙分野の展示で使用する模型に西陣織を採用してもらう機会にもつながりました。

現在は、そのご縁から本物の宇宙服の生地開発にも取り組んでいるそうで、「タイヨウネクタイの生地が本当に宇宙に行く日が来たらおもしろいですよね!」と目を輝かせて居られました。

部会活動

北大路部会は、いま大きな世代交代のタイミングを迎えています!

今期でベテラン会員の多くが卒業を迎え、来期に残るのは今期入会のメンバーが中心。継続して参加できる既存会員はごく少数で、現状のままではメンバーが10名を下回る可能性も。

そのような状況だからこそ、「新入会員さんにJOCに関わってもらうこと」を活動の中心に据えています。入会前の段階からコミュニティ・バンク京信の担当者と連携し、

「北大路部会はこういう雰囲気ですよ」

「一緒に頑張りましょう」

と、丁寧に説明することも欠かさないそうです。来てもらわないと、どれだけ想いがあっても伝わらないので、まずは「ここに来てみよう」と思ってもらえるように、部会として工夫を重ねているそうです。

部会の雰囲気を一言で表すなら、「思いやりのある、相互協力のチーム」。

先輩メンバーは新しい会員にJOCを楽しんでもらえるよう気を配り、若いメンバーも「先輩たちをちゃんと理解したい」と歩み寄ろうとする。その相互の姿勢が温かな空気を生み出しています。

「家族みたいとよく言われますけど、本当に、いい意味で ”家族っぽい” 距離感だと思います。」と松田さんは笑顔で語られていました。

JOCでの経験

JOC入会当初の松田さんは、自身を「どちらかというとお客さん側」と表現されていました。

例会や事業には参加するものの、どこか一歩引いた立場で見ている時間が長かったと言います。そんなスタンスが大きく変わったきっかけが、第23期『コミュニケーション・ツナグ委員会』への参加でした。

当時の委員会では、新入会員オリエンテーションや歓迎会で使用する資料・スライドの刷新に取り組みました。これまで引き継がれてきたデザインではなく、まったく新しい構成・デザインにチャレンジ。その最初の製作係が松田さんでした。

白をベースに、花が散りばめられたような温かいデザインは、従来の「白と青」のイメージから一転。「堅いイメージから柔らかいイメージで、華やかさがあった」と周囲からも好評で、そのフォーマットは今期の歓迎会でも採用されているそうです。

「自分が頑張ってみることで、委員会にもJOC全体にもちゃんと貢献できる、という実感が持てました」と松田さん。その経験以降、活動にも前向きに取り組むようになり、JOCでの視野も一気に広がりました。同じ委員会で活動したメンバーとは、今でも良い関係が続いているといいます。「卒業してもきっと仲良くいられるだろうな、と思える仲間ができたことが、一番の収穫かもしれません。」と穏やかな表情で振り返っておられました。

JOCという組織については、「一度居場所ができると、そこから芋づる式に人とつながっていける場」

部会、本部、同年会、同好会…入口は様々ですが、そのどこかで“自分の場所”を見つけることができれば、世代や業種を超えた深い関係が生まれていく。その実感が、いまの松田さんの活動の原動力になっています。

今後の展望と新入会員へのメッセージ

会社としては、引き続き海外の取引先を増やしていくことが目標です。ミラノの展示会で出会う世界中のバイヤーに、西陣織ネクタイの魅力をどう伝えるか。1回きりの取引で終わらず、継続的な関係を築くことが今後の大きなテーマです。「需要がないわけじゃなくて、それを持っていって回す人が足りていないだけだと感じています。だからこそ、ちゃんと外に出ていきたい。」と語られていました。

北大路部会は、目前に迫る世代交代をチャンスと捉えています。「大変なのは事実ですけど、新しい色に生まれ変わるタイミングでもあると思っています。」と前向きな言葉も。

先輩たちは「新入会員さんにJOCを楽しんでもらいたい」という想いを強く持っており、そのきっかけづくりを常に考えています。ただし、「楽しんでもらおうと思っても、来てもらわないとどうしても届かない部分があります」と率直なお話も。

新しく入会する方々へのメッセージをお願いすると、次のような言葉が返ってきました。


「いろいろ心配なことはあると思いますが、とりあえず一度“目の前にある波”に乗ってみてほしいです。もし合わなかったら、そのときは自分に合う場所を探せばいい。いろんな場所があるのがJOCの良さだと思うので、その全部も含めて楽しんでもらえたら嬉しいです。」

取材後記

取材中の松田さんは、カメラを向けられると少し照れた表情を見せながらも、仕事やJOCの話になると一気に熱を帯びていくのが印象的でした。東京で映画編集に打ち込んだ日々、震災と入院を機に京都へ戻る決断、家業のネクタイ会社で自社商品開発や海外展示会に挑戦し、ついには宇宙服の生地開発にまで関わるようになった現在。その歩みは、「自分で考えて、自分で動ける仕事」を求め続けた一人の挑戦の軌跡でもあります。

そして今、北大路部会は大きな転換期を迎えています。その舵を取る部会長として、新入会員一人ひとりに目を配り、「まずはここを楽しんでほしい」と静かに、しかし力強く語る姿に、部会の未来への確かな安心感を覚えました。西陣織の細やかな柄のように、松田さんの周りには、人と人とのご縁が丁寧に紡がれていくのだろう——そう感じさせてくれる取材でした。

コミュニティシェア委員会

インタビュー&記事作成:早川

撮影:林

SpecialThanks:藤木・戸田・玉木

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