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口丹部会 部会長インタビュー
口丹部会 有限会社朝日製粉所 吉田将史
― 受け継いだ機械の先に。米の香りと“つながり”で切り拓く、粉の仕事の未来 ―
プロフィール
有限会社朝日製粉所の取締役・吉田 将史さん。祖父が創業し、現在は三代目として家業を担っています。落ち着いた口調で現実を見つめながらも、ところどころに「やってみよう」という前向きさが滲む方です!
意外だったのは、吉田さんが最初から製粉の世界にいたわけではないこと。
東京で建築関連の営業職として働き、まったく異なる環境で経験を積んだうえで地元へ戻られました。子どもの頃から家業を「すごいな」と思う気持ちはあったものの、「まずは自分のやりたい仕事をやろう」と外の世界に出た。その選択が、今の挑戦の土台になっているように感じました。

会社と事業
朝日製粉所の主軸は、米粉・もち粉の製造販売です。地元のお米を中心に仕入れ、用途に合わせた粉へ仕上げていく。言葉にするとシンプルですが、吉田さんの話を聞くほどに、粉づくりが“繊細な技術と経験の積み重ね”で成り立っていることがよく分かりました。
米粉は「同じ米粉」という一言で括れない世界です。水分の持たせ方、粒子の細かさ、粉の粗さ、香りの残し方など、調整次第でお菓子向きにも、パン向きにも、料理向きにも変わります。
だからこそ、既存のお客様が簡単に別の米粉へ乗り換えることは少なく、逆に言えば、新規で「うちの粉を使ってください」と提案しても、すぐに採用される世界でもありません。
お客様側がレシピを一から組み直す必要があるため、特に機械製造や量産の現場では、粉を変える決断は容易ではないのです。
その中で吉田さんが大切にしているのが、「お米の風味を逃さない製法」です。工場の中にふわっと甘い香りが漂うほど、お米の旨みや香りが立つ状態で粉にしているそうです。お客様からも「お米の味がしっかりする」「風味が豊か」という声をもらうことが多く、製粉所としての『こだわり』が評価につながっているのだと感じました。
そして吉田さんの代で明確に始まった挑戦が、BtoC(一般消費者向け)の商品展開です。もともと朝日製粉所は業者向け卸(BtoB)が中心でしたが、「もっと手に取りやすい形で届けられないか」と考え、米粉のパンケーキミックスからスタートしました。
このBtoCへの転換を後押ししたのが、コロナ禍と“姉の視点”でした。外出が制限され、業界全体の先行きが読みにくくなったタイミングで、お姉さまが日本に帰国。フランスで約10年暮らしていたお姉さまは、現地のスーパーにグルテンフリー商品が当たり前に並ぶ環境を知られていました。
日本では「探しに行かないと見つからない」状況であることに気づき、「グルテンフリーなのに、選択肢が少なすぎるよね」という会話が、商品づくりのきっかけになったそうです。
そこから生まれたのが、『グルテンフリーのグラノーラ』
現在は6種類を展開し、甘い系が4種類、しょっぱい系が2種類と、好みやシーンで選べるラインナップになっています。実店舗への卸も少しずつ増えていますが、「実店舗で“いつでも買える場所”を増やしたい」というのが、次の課題。ネット販売でも購入でき、ふるさと納税にも対応するなど、販路は着実に広がっています。














また、事業を進める上では補助金の活用も追い風になりました。タイミング良く補助金を活用できたことが、商品開発や事業展開の踏ん張りどころを支えたそうです。
取材の中で一番気になったことがM、ここ数年の米の価格高騰。
「製粉業にとって極めて現実的なプレッシャーです。『米が手に入らない』という意味での欠品は大きくなかったものの、価格が急激に上がり、『お金を出せば買えるが、コストが跳ね上がる』という状況でした。
業界では以前から「米が足りなくなる」と言われていたため、ある程度の備え(在庫の確保)をしていたことが功を奏し、当時は余裕を持てたそうです。しかしながら、価格上昇がここまで大きくなるとは想定しづらく、結果的に“備えていたかどうか”で明暗が分かれました。
安く仕入れていた分を高値で売れて利益を伸ばした米屋もあれば、備えが薄く価格転嫁も難しいところは厳しい。吉田さんも「怖かった」と率直に話されていました。
さらに、国産米が高騰すると輸入米が相対的に安く見え、外食産業を中心に流れが変わる可能性もあり、100%米が原価に直結する商材だからこそ、米の値動きはそのまま経営に直結するそうです。
そうした環境の中で、朝日製粉所は“粉としての品質”だけでなく、“商品としての伝え方”にも挑戦しています。”グラノーラ”では、ご縁から京都のホテル関係者につながり、「これ、すごく美味しい。どこの?」と紹介が広がったエピソードもありました。お子さまの学校での出会いから縁がつながったという話は、まさに吉田さんの事業が「品質 と ご縁」で伸びていくことを象徴していると感じました。
部会活動
口丹部会は、部会内で仲が良く、関係性も近いアットホームな空気がある部会です。紹介で入会するケースも多く、「入る前からみんな仲がいい」という土台があるのは強みでもあります。
一方で、吉田さんが課題として挙げるのが、「本部事業になると、”山”を越えてくれない」という点です。部会事業なら集まるが、部会を越えた活動になると移動距離や時間、仕事の都合が重なり、参加のハードルが上がる。支店が複数ある環境で動いているメンバーも多く、物理的な難しさがあるのは現実です。
それでも、「今期は出来るだけ本部に引っ張りたい」
口丹部会の居心地の良さを保ちながら外にも出て、つながりを増やしていく。仲の良さが“内に閉じる理由”にならないよう、少しずつ流れを変えたいという想いを強く感じました。

JOCでの経験
入会当初、本部事業に行っても口丹部会から“ほぼ一人参加”になることが多かったことです。部会の中では仲が良い。しかし外に出ると急にアウェーになる。人見知り気味の自分にとっては、「どうやって仲良くなるんやろ」と悩んだ時期があったそうです。
きっかけになったのが、フットサル同好会『アズーロ』
フットサルを通して自然に会話が生まれ、距離が縮まる。仕事の肩書きや部会が違っても、スポーツの場だと話しやすい。吉田さんは同好会活動を長く続け、会長を務めた経験もあります。
印象的だったのは、『よう来てくれたな、って一声があるだけで全然違う』
ポツンと一人で電車で帰る寂しさを経験したからこそ、歓迎されることの価値が分かる。だからこそ、新しく入る人には“足を運んでほしい”とまっすぐに伝えられるのだと思います。
アズーロは現在、第1・第3火曜日を基本に活動しており、参加人数が少ない時は中止にするなど、継続のための工夫もされています。昔より運営は少し引き締まったものの、その分「続けること」の難しさと大切さを、みんなで共有しながら回している空気があるようでした。

今後の展望と新入会員へのメッセージ
吉田さんが繰り返し語っていたのは、「つながりは絶対にプラスにしかならへん」ということでした。
最初は誰でも戸惑うし、居場所の作り方も分からない。でも、行かないと分からないことがある。だからこそ、まずは足を運んで、きっかけを掴んでほしい。
またご自身も、“顔は知っているけど何をしているか知らない”という距離感を縮めたいと話されていました。
商品づくりやコラボ企画、マルシェのような場づくりを通して、「知る機会」「話す機会」を増やしていきたい。結局、関係性は“会話の回数”で深まるからです。
「一緒に”JOCやそれぞれの事業”を盛り上げられたら」
その言葉には、無理に引っ張るのではなく、同じ目線で巻き込みたいという吉田さんらしさがありました。
取材後記
吉田さんは、「守る仕事」と「攻める仕事」を同時に担う方でした。
製粉という積み上げの世界で、お米の香りと旨みを逃さない工夫を続ける一方、コロナ禍をきっかけにBtoCへ挑戦し、グルテンフリーという新しい価値を形にしていく。そのバランスがとても現代的で、だからこそ応援したくなります。
米の価格高騰や市場の変化は、言葉にすると簡単でも、経営の現場では大きな緊張感を伴うはず。それでも吉田さんは、備え、工夫し、様々なご縁に巡り合いながら前に進んで来られました。粉は目に見えにくい商品ですが、食べた人の記憶には残る。朝日製粉所の粉やグラノーラが、誰かの日常を少しやさしくする未来を想像できる取材でした!
コミュニティシェア委員会
インタビュー&記事作成:平山
撮影:林
SpecialThanks:木村・玉木
